第2回 岩石惑星を深める外から見た球に、地図を重ねる
第1回で作った9枚のカードのうち、太陽に近い4つ——水星・金星・地球・火星——に表面の地図を1枚ずつ重ねます。加えて、地球の②周りにあたる月を、独立したカードとして詳しく置きます。
覚えるのは、地形の名前そのものではなく「その天体のどこに何があるか」です。カロリス盆地は水星の右上、オリンポス山は火星の赤道より少し北の左寄り、といった位置を、実際の地図の上に置いてください。この作業が、そのまま第6回以降の地球の地図の練習になります。
この回の到達目標
- 4つの岩石惑星と月について、白紙に丸を描き、主な地形を位置つきで5つ以上書き込める地図を見ずに。名前と、おおよその緯度・経度の向き(北か南か、左寄りか右寄りか)が合っていれば正解。
- 4つの大気を、気圧・主成分・平均温度の3点で言い分け、その違いが生じた理由を1つずつ説明できる「金星は厚い二酸化炭素の大気で熱を逃がさない」「火星は重力が弱く磁場がないため大気が薄い」など、理由まで。
- 探査機の名前を出されたら、行き先・年代・何を明らかにしたかを言えるマリナー10号、メッセンジャー、ベピコロンボ、ベネラ、マゼラン、バイキング、キュリオシティ、パーサヴィアランス、アポロ11号、嫦娥6号。
第1回の到達目標②(どの天体でもカードの7割を見ずに言える)が満たせていない状態でこの回に入ると、地形名が骨格のない場所に散らばります。先に第1回のカードを1周してください。
地図を重ねる
第1回のカードは「外から見た球」でした。この回では同じ球の表面を開いて、展開図(世界地図と同じ形の平面図)を重ねます。下の各カードには、その天体の展開図が開いたまま置いてあります。球の姿は第1回のカードにあるので、同じ天体を第1回と行き来しながら、頭の中で同じ場所に重ねてください。
「オリンポス山 高さ22km」という文だけを覚えると、火星以外の場所にも貼りつきます。火星の展開図の、左のふくらんだ高地(タルシス)の上にある白い丸——そこに高さの数字を置いてください。思い出すときは、まず火星の球を出し、左側を正面に回し、タルシスを見つけ、そこから数字を読みます。
1. 集める(1分)——下のカードの地図を開き、同じものを大きい画面でも開く。出どころは各カードのクレジットにあります。手元に保存する場合は image/memoryverse/ に置くと、カードが先にそちらを読みます。
2. 区切る(2分)——展開図を左・中央・右の3つに縦に割り、さらに赤道で上下に割って6区画にする。名前を覚える前に「この天体は6つの区画に分かれている」という枠を作ります。
3. 置く(2分)——この回の一覧表にある地形を、区画のどこに入るか指で差しながら声に出す。「カロリス盆地、上の……中央よりやや右」のように。
4. 閉じる(1分)——目を閉じて、6区画の枠だけを思い浮かべ、入れたものを言う。
5. 照合(1分)——もう一度地図を開き、ずれていたものに印をつける。翌日はその区画から始めます。
地球だけは 2. までです。6区画に割って眺めるところまでにとどめ、地表の地名は置きません。地名・地域・国は地球の回(第6回以降)で、同じ地図の上に置いていきます。
地図を大きく見るときの出どころ:USGS Astrogeology(astrogeology.usgs.gov)、NASA Science の各惑星ページ(science.nasa.gov/solar-system/planets)、Wikimedia Commons の各ファイルページ。
①位置 → ②周り → ③外観 → ④断面 → ⑤重さ。この回で増えるのは③のなかだけです。③に入ったら地図を開き、地形を位置つきで言います。球の見え方や数値は第1回のカードにあるので、そちらで言います。①②④⑤は第1回のまま変えません。
この回で扱うのは③外観のうち、表面の地形と位置だけです。天体そのものの性質(重さ・大きさ・重力・磁場・大気・水・核)は第1回のカードにあります。第1回で天体の性質を、この回でその表面を覚える、という分担です。
この教材の緯度経度は概略です。正式な値はUSGS Gazetteer of Planetary Nomenclature(planetarynames.wr.usgs.gov)で、地形名を入れると中心座標と直径が出ます。経度は天体や資料によって東経・西経の取り方が違うので、細かい数値を覚える必要はありません。覚えるのは「北か南か」「地図の左か右か」だけで十分です。
水星
| 名前 | 何か | 位置の目印 |
|---|---|---|
| カロリス盆地 Caloris Planitia | 直径約1,550kmの巨大な衝突跡。太陽系でも最大級 | 北緯約30度。地図の上半分。名前は「熱」の意味で、近日点で正面を向く場所の一つ |
| パンテオン・フォッサ Pantheon Fossae | カロリス盆地の中央から放射状にのびる細い谷の束 | カロリス盆地のど真ん中。クモの巣のように見える |
| ホクサイ Hokusai | 若いクレーター。白い光条(レイ)が長く伸びる | 北半球。全球図でいちばん目立つ白い放射模様 |
| ベートーヴェン盆地 Beethoven | 直径約600〜650kmの古い盆地 | 南半球側。カロリスより暗く、縁がぼやけている |
| ディスカバリー・ルペス Discovery Rupes | 数百kmにわたる断層崖。惑星が縮んだ跡 | 南半球。細い線としてしか見えないので、地図では位置だけ |
| 北極のクレーター群 | 永久影の底に水の氷があると考えられている | 地図のいちばん上の帯。極は日が当たらない |
クレーターの名前は芸術家・作家・音楽家から取られています(北斎、ベートーヴェン、トルストイ、紫式部など)。名前の系統を知っておくと、どの天体の地形かを間違えにくくなります。
- マリナー10号(1974–75)——3回接近。表面の約45%を撮影。水星に行った最初の探査機
- メッセンジャー(2011–15周回)——全球を地図化。極の氷、縮んだ証拠、大きな鉄の核を確認
- ベピコロンボ(ESA/JAXA)——2026年9月3日に遷移モジュールを分離して到着フェーズへ。周回軌道への投入は2026年11月21日の予定で、この教材の時点ではまだ周回していません
ベピコロンボの日程は変わりえます。上の日程は2026年9月時点のESA発表によるもので、当初は2025年12月の到着予定でした。最新はESAのミッションページで確認してください。
金星
| 名前 | 何か | 位置の目印 |
|---|---|---|
| イシュタル大陸 Ishtar Terra | オーストラリアほどの高地。金星の2つの「大陸」の北側 | 地図の左上、北緯60度より上。明るく写る |
| マクスウェル山脈 Maxwell Montes | 金星で最も高い山脈(約11km) | イシュタル大陸の東の端。地図でいちばん白く光る部分 |
| ラクシュミ平原 Lakshmi Planum | イシュタル大陸の上にある高い溶岩の台地 | マクスウェル山脈のすぐ西 |
| アフロディーテ大陸 Aphrodite Terra | アフリカほどの大きさの高地。2つの「大陸」の南側 | 赤道に沿って横に長く。地図の中央から右にかけて帯のように伸びる |
| サパス山 Sapas Mons | 盾状の火山。溶岩が広く流れ出した跡が残る | アフロディーテ大陸の北にあるアトラ地域 |
| コロナ coronae | 直径数百kmの円形のしわ。下から熱いものが押し上げてできたと考えられる | 金星にしかない形。全球に数百個ちらばる |
金星の地形名はほぼすべて女性の名前・女神の名前です(例外はマクスウェル山脈など少数)。これも天体の見分けの手がかりになります。
- ベネラ計画(ソ連)——ベネラ7号(1970)が初めて他の惑星の地表から信号を送った。9号以降は地表の白黒写真を送ったが、高温高圧のため動けたのは1〜2時間ほど
- マゼラン(NASA、1990–94周回)——レーダーで表面の約98%を地図化。いま使われる金星の地図はほぼこれ
- あかつき(JAXA、2015年周回投入)——雲と大気の動きを観測。運用は2024年に終了
地球(宇宙から見た外観)
この回の地球は宇宙から見た姿だけです。国名・都市・産物・民族は地球の回(第6回以降)で扱います。ここでは「遠くから見て地球をどう見分けるか」だけを覚えてください。
月
月は地球の②周りにあたるので、地球のすぐあとに置きます。第1回では1行だけでしたが、この回から独立したカードにします。可搬層を廃止したため、衛星も覚える対象です。
| 名前 | 何か | 位置の目印(表側) |
|---|---|---|
| 静かの海 Mare Tranquillitatis | アポロ11号が降りた海 | 中央からやや右上。着陸地点は北緯0.7度・東経23.5度 |
| 雨の海 Mare Imbrium | 表側で最大級の丸い海。巨大衝突の跡 | 左上の大きな円。北緯約33度 |
| 嵐の大洋 Oceanus Procellarum | 唯一「大洋」と呼ばれる広い暗部 | 左側全体。雨の海の下から左端まで |
| 危難の海 Mare Crisium | 縁から少し離れた独立した卵形の海 | 右端近くの小さな楕円。北緯約17度 |
| ティコ Tycho | 若いクレーター。白い光条が全球に伸びる | 下寄りの中央。南緯43度・西経11度。満月のとき最も目立つ白い点 |
| コペルニクス Copernicus | 直径約93kmのクレーター。段になった内壁 | 中央よりやや左下。北緯約10度 |
| 南極エイトケン盆地 South Pole–Aitken | 直径約2,500kmの巨大な衝突跡。太陽系最大級 | 裏側なので地球からは見えない。南極をまたぐ |
- 合う点——月は密度が低く鉄の核が小さい(地球のマントルの材料でできたと考えると合う)。地球と月を合わせた回転の勢いが説明できる。アポロが持ち帰った岩石の酸素同位体比が地球のものとほぼ同じ
- 合わない点——同位体比が似すぎている。衝突した天体の物質がもっと混ざっているはずなのに、その痕跡が見えない。この点は未解決で、衝突の規模や条件を変えた改良案が今も出続けています
- いま採られていない説——捕獲説(通りかかった天体を捕まえた)、分裂説(速く回る地球からちぎれた)、双子集積説(地球と同時にできた)。いずれも上の観測とうまく合いません
「月がどうできたかは決着していない」ことまで含めて覚えてください。教材として断定できるのは、いくつかの説のうち一つが最も有力だという段階までです。
| 年 | できごと | 覚えどころ |
|---|---|---|
| 1959 | ルナ2号(ソ連)が月面に到達 | 人工物が初めて他の天体に届いた |
| 1966 | ルナ9号(ソ連)が初の軟着陸 | 壊れずに降りた最初 |
| 1969 | アポロ11号が静かの海に有人着陸 | 7月20日。以後1972年のアポロ17号まで6回、12人が歩いた |
| 2019 | 嫦娥4号(中国)が裏側に初着陸 | 裏側は地球と直接通信できないので中継衛星が要る |
| 2023 | チャンドラヤーン3号(インド)が南極域に着陸 | 南緯約69度。着陸を成功させた4番目の国 |
| 2024 | SLIM(日本)が誤差約55mのピンポイント着陸/嫦娥6号が裏側から試料を持ち帰る | 「降りたい場所に降りる」段階に入った |
| 2025 | ブルーゴースト(米・民間)が危難の海に完全な軟着陸 | 3月2日。民間で初めて倒れずに降りた |
| 2026 | アルテミスII——4月1日〜11日、有人で月を周回飛行(着陸はしていない) | アポロ17号以来54年ぶりに人が月の近くへ。有人着陸はアルテミスIII以降の計画 |
出典:NASA/ESA/JAXA/ISRO各機関の発表(2026年9月時点)。今後の計画日程は変わるので、年と「何が初めてか」だけを覚え、予定は覚えないでください。
ティコ・クレーターが、太陽系から地球へ移るときの入口です。地球の回(第6回以降)へ移るときは必ずここから入り、戻るときもここへ戻ります。ここには地形以外の情報を置きません。
火星
| 名前 | 何か | 位置の目印 |
|---|---|---|
| オリンポス山 Olympus Mons | 高さ約22kmの盾状火山。裾野は約600km | 北緯約19度。高度図で左寄りの白い丸 |
| タルシス三山 Tharsis Montes | アルシア/パヴォニス/アスクレウスの3つの火山が一直線に並ぶ | オリンポス山のすぐ右下に斜めの3点。赤道付近 |
| マリネリス峡谷 Valles Marineris | 長さ約4,000km、深さ最大約7kmの巨大な裂け目 | タルシスの東(右)へ、赤道に沿って横に走る線。南緯約14度 |
| ヘラス盆地 Hellas Planitia | 直径約2,300km、深さ約7kmの衝突盆地。火星で最も低い場所 | 右下の大きな濃い青の円。南緯約42度 |
| 北の低地 Vastitas Borealis | 北半球を覆う平らな低地。かつて海だったという説がある | 地図の上半分ほぼ全部 |
| 極冠 Planum Boreum / Australe | 北は主に水の氷、南は水の氷と二酸化炭素の氷 | 地図の上端と下端の白 |
| ゲール・クレーター Gale | キュリオシティが降りた場所。中央に高さ5kmの山 | 南緯約5度・東経約138度。赤道のすぐ南 |
| ジェゼロ・クレーター Jezero | パーサヴィアランスが降りた場所。川が流れ込んだ三角州の跡 | 北緯約18度・東経約78度。マリネリス峡谷の東 |
火星の地形はラテン語の一般名詞+固有名でできています。Mons=山、Valles=谷、Planitia=平原、Planum=台地。この語は他の惑星でも同じ意味で使われるので、覚えておくと地形の種類が名前から分かります。
- マリナー4号(1965)——初めて火星に接近し、クレーターだらけの姿を送った
- バイキング1号・2号(1976着陸)——初めて火星表面から写真を送り、生命を探す実験を行った(結果は決定的でない、と現在も評価されている)
- キュリオシティ(2012年着陸、ゲール・クレーター)——中央の山を登り続けている。2026年8月時点で運用中で、着陸から標高1kmを登った
- パーサヴィアランス(2021年着陸、ジェゼロ・クレーター)——岩石試料を採取して保管。2026年6月に走行距離42kmを超えた
探査車の稼働状況は変わります。上は2026年9月時点のNASAの発表によるものです。「いま何台動いているか」ではなく、どの探査機がどこに降りて何を見つけたかを覚えてください。
大気の違いと、その理由
4つの岩石惑星は、材料も生まれた時期も似ています。それでも大気がまるで違うのは、重力の強さ・太陽からの距離・磁場の有無・二酸化炭素を回収する仕組みがあるかの組み合わせによります。数字を覚えるより、この4つの条件で説明できるようにしてください。
気圧・主成分・温度の数値は第1回のカードにあるもので、ここでは横に並べて理由をつけるために再掲しています。天体カードからは外しました。この節で新しく覚えるのは、いちばん右の「理由」の列だけです。
| 天体 | 気圧(地球=1) | 主成分 | 平均温度 | いまの姿になった理由 |
|---|---|---|---|---|
| 水星 | 約10⁻¹⁵ | O₂・Na・H₂(外気圏) | −180〜430℃ | 重力が弱く、太陽に近くて高温。気体を引きとめられない。いまあるのは太陽風と隕石が表面から叩き出した原子 |
| 金星 | 約92 | CO₂ 96.5% | 約464℃ | 厚い二酸化炭素が赤外線を逃がさない(温室効果)。水が失われ、二酸化炭素を岩石に戻す仕組みが働かなくなったと考えられる |
| 地球 | 1 | N₂ 78%・O₂ 21% | 約15℃ | 十分な重力+磁場+水と岩石が二酸化炭素を回収する循環。酸素は生物が作ったもの |
| 火星 | 約0.006 | CO₂ 95% | 約−63℃ | 重力が弱く全球的な磁場がないため、太陽風に大気をはぎ取られてきた(MAVENが流出を観測) |
| 月 | 約3×10⁻¹⁵ | ほぼ真空 | −173〜127℃ | 重力が地球の6分の1しかなく、気体を保持できない |
「太陽に近いほど熱い」は成り立ちません。金星は水星より遠いのに、平均温度ははるかに高い。大気があるかないかが距離より効く、という例として覚えてください。
「火星は二酸化炭素なのに寒い」のは、成分が同じでも量が違うからです。温室効果の強さは成分の割合ではなく、大気そのものの厚さで決まります。
高さと深さを、同じ物差しで
地形の大きさは、天体ごとにばらばらに覚えると比べられなくなります。地球のエベレストを物差しにして、その何倍かで置いてください。
覚える数は3つだけで足ります。エベレスト 約9km/マクスウェル山脈 約11km/オリンポス山 約22km。深さは「マリネリス峡谷もヘラス盆地も約7km」とまとめ、マリアナ海溝は約11kmでマクスウェル山脈と同じ、と結びつけてください。
探査の歴史
探査機は「誰が・いつ・どこへ・何を明らかにしたか」の4点だけを覚えます。年号は10年単位で十分です。頭の中では、探査機をその天体の像のそばに置いてください——マゼランは金星の雲の上を回り、キュリオシティはゲール・クレーターの中にいます。
| 探査機 | 行き先 | 年 | 明らかにしたこと |
|---|---|---|---|
| マリナー10号 | 金星→水星 | 1974–75 | 水星に行った最初の探査機。表面の約45%を撮影。金星の重力を使って軌道を変える方法を初めて実用化した |
| メッセンジャー | 水星 | 2011–15(周回) | 水星の全球地図。極の永久影に氷。惑星が縮んだ証拠。核が大きいこと |
| ベピコロンボ | 水星 | 2018打ち上げ 2026到着予定 | ESAとJAXAの2機。周回軌道への投入は2026年11月21日の予定(2026年9月時点) |
| ベネラ7号〜14号 | 金星 | 1970年代 | 他の惑星の地表から信号を送った最初(7号)。地表の写真と気温・気圧の実測 |
| マゼラン | 金星 | 1990–94(周回) | レーダーで表面の約98%を地図化。いま使う金星の地図はほぼこれ |
| バイキング1・2号 | 火星 | 1976(着陸) | 火星表面からの最初の写真。生命を探す実験(結果は決定的でないと評価されている) |
| キュリオシティ | 火星 | 2012– | ゲール・クレーター。かつて湖があったこと、有機分子の存在。2026年も運用中 |
| パーサヴィアランス | 火星 | 2021– | ジェゼロ・クレーター。川の三角州の跡を調べ、岩石試料を採取・保管。2026年も運用中 |
| アポロ11〜17号 | 月 | 1969–72 | 6回の有人着陸で計12人が歩き、岩石を持ち帰った。この試料が月の起源の議論を決めた |
| 嫦娥6号 | 月 | 2024 | 月の裏側から試料を持ち帰った最初 |
打ち上げ日、機体の重さ、搭載機器の名前は覚えません。予定になっている日程も覚えません(変わります)。表の最後の列だけを、天体の像のそばで言えるようにしてください。
演習
すべてカードと地図を見ずに答え、答えたあとで開いてください。間違えた項目は控えておき、翌日その天体から巡ります。
演習1地形から天体へ、位置つきで
次の地形は、どの天体の、どのあたりにありますか。「天体名+北か南か+地図の左か右か」の形で答えてください。
カロリス盆地/マリネリス峡谷/マクスウェル山脈/嵐の大洋/ヘラス盆地/アフロディーテ大陸/ティコ/オリンポス山
解答
- カロリス盆地=水星、北緯約30度、地図の上・中央寄り。直径約1,550km
- マリネリス峡谷=火星、赤道のすぐ南、タルシスの東(右)へ横に走る。長さ約4,000km
- マクスウェル山脈=金星、北緯約65度、イシュタル大陸の東端。高さ約11km
- 嵐の大洋=月の表側、左側全体を占める広い暗部
- ヘラス盆地=火星、南緯約42度、地図の右下の大きな円。深さ約7km
- アフロディーテ大陸=金星、赤道に沿って横に長い高地。中央から右
- ティコ=月の表側、南緯43度・下寄りの中央。白い光条が全球に伸びる。地球の回への入口
- オリンポス山=火星、北緯約19度、地図の左寄りの白い丸。高さ約22km
演習2大気の理由を言う
- 金星は水星より太陽から遠いのに、なぜ表面が熱いのですか。
- 火星と金星はどちらも大気の95%以上が二酸化炭素です。なぜ火星は寒いのですか。
- 火星の大気はなぜ薄くなったと考えられていますか。根拠になる観測を1つ挙げてください。
- 水星の「外気圏」は、地球の大気と何が違いますか。
解答
- 二酸化炭素の厚い大気が赤外線を逃がさないため(温室効果)。表面は約464℃で、太陽により近い水星の昼(約430℃)より高い。距離より大気の有無・厚さのほうが効く例です。
- 大気の量が違うから。火星の気圧は地球の約0.6%、金星は約92倍。温室効果の強さは成分の割合ではなく大気の厚さで決まります。
- 重力が弱く(質量は地球の約11%)、全球的な磁場がないため、太陽風に大気をはぎ取られてきたと考えられています。根拠——NASAのMAVEN探査機が大気の流出を実際に測っている。また、川や三角州の地形は、かつて水が液体でいられる大気があったことを示します。
- 惑星がもともと持っていた気体ではなく、太陽風と微小隕石が表面から叩き出した原子が薄く漂っているもの。気圧は約10⁻¹⁵ barで、ナトリウムが多いのが特徴です。
演習3探査機を天体に戻す
次の探査機の行き先・年代(10年単位でよい)・明らかにしたことを1つずつ言ってください。
マリナー10号/メッセンジャー/ベピコロンボ/ベネラ7号/マゼラン/バイキング1号/キュリオシティ/パーサヴィアランス/嫦娥6号
解答
- マリナー10号——水星(金星経由)、1970年代。水星に行った最初。表面の約45%を撮影
- メッセンジャー——水星、2010年代に周回。全球地図、極の氷、惑星が縮んだ証拠
- ベピコロンボ——水星、ESAとJAXA。2018年打ち上げ、周回軌道への投入は2026年11月21日の予定(2026年9月時点でまだ周回していない)
- ベネラ7号——金星、1970年。他の惑星の地表から信号を送った最初
- マゼラン——金星、1990年代に周回。レーダーで表面の約98%を地図化
- バイキング1号——火星、1976年着陸。火星表面からの最初の写真
- キュリオシティ——火星のゲール・クレーター、2012年着陸。かつて湖があったこと、有機分子
- パーサヴィアランス——火星のジェゼロ・クレーター、2021年着陸。三角州の跡を調べ、試料を採取・保管
- 嫦娥6号——月、2024年。裏側から試料を持ち帰った最初
演習4月
- 月の表側と裏側で、見た目が大きく違うのはなぜですか(見た目の違いを先に述べてから)。
- 月がつねに同じ面を地球に向けているのはなぜですか。
- ジャイアント・インパクト説を支える証拠を2つと、説明できていない点を1つ挙げてください。
- アポロ11号はどこに降りましたか。着陸は何年で、アポロ計画では合計何回・何人が月面に立ちましたか。
解答
- 表側は暗い「海」が約31%を占めるのに対し、裏側は約1%しかなく、ほぼ高地とクレーターです。表側の地殻が薄く、溶岩が地表まで上がりやすかったためと考えられています(GRAIL探査機の重力測定などによる)。
- 自転周期と公転周期がどちらも約27.3日で一致しているから(潮汐によって固定された)。
- 証拠——⑴月は密度が低く鉄の核が小さい(地球のマントルの材料でできたとすると合う)。⑵アポロが持ち帰った岩石の酸素同位体比が地球のものとほぼ同じ。⑶地球と月を合わせた回転の勢いが説明できる。
説明できていない点——同位体比が似すぎていること。衝突した天体の物質がもっと混ざっているはずなのに、その痕跡が見つかりません。 - 静かの海(北緯0.7度・東経23.5度)、1969年。アポロ計画では11号から17号まで6回着陸し、12人が月面に立ちました。
演習5白紙から地図を再現する
天体を1つ選び(無作為に)、白紙に横長の長方形を描いて展開図に見立て、赤道の線と縦3本の目安線を引いてください。そこへ、思い出せる地形をすべて書き込みます。書き終えたら地図と照合します。
採点のしかた
一覧表にある地形を1項目として数えます。名前が合っていて、かつ入れた区画(上下・左右)が合っていれば正解。名前だけ合って場所が違うものは0.5とします。
到達目標①の目安は、5項目以上を位置つきで書けることです。何度も場所を間違える地形は、隣の地形との関係で覚え直してください(例:「マクスウェル山脈はイシュタル大陸の東の端」「パンテオン・フォッサはカロリス盆地のど真ん中」)。単独の点として覚えるより、隣接関係のほうが崩れにくくなります。
③外観だけでなく、①位置〜⑤重さを通して巡り、第1回の数値が出てくるかも同時に確かめてください。地形を足したことで骨格の数値が抜け落ちていないか、ここで分かります。
第1〜5回の改訂
| 回 | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 太陽系の骨格 | 太陽と8惑星の基本情報と特徴。配置図と比較図。天体の巡り方①〜⑤ |
| 2 | 岩石惑星を深める | この教材。水星・金星・地球(外観)・月・火星の地形、大気の違いとその理由、探査の歴史 |
| 3 | 巨大惑星を深める | 木星〜海王星の大気の構造、環、主要衛星それぞれのカード(ガリレオ衛星、タイタン、エンケラドゥス、トリトンなど) |
| 4 | 小天体 | 小惑星帯(ケレス、ベスタなど)、準惑星(冥王星ほか)、カイパーベルト、彗星、オールトの雲 |
| 5 | 太陽と全体の統合 | 恒星としての太陽の詳細、太陽系の形成、全天体の横断比較と巡回 |
第6回以降(地球の回)に入る前に、太陽系の回の全体を1回通して巡る時間を第5回に置きます。第6回以降の構成は、地球の回に入る直前に目的に合わせて見直します。
根拠と強度
| この回の要素 | 主な根拠 | 示していないこと | 強度 |
|---|---|---|---|
| 見ずに思い出す(演習・前日想起) | 検索練習効果。読み返しより想起のほうが長く残ることが多数の研究で繰り返し示されている(Roediger & Butler 2011 の総説ほか) | 理解や応用が自動的に伸びること | 強 |
| 間隔を空けて繰り返す(前日・3日前) | 分散学習の効果(Cepeda et al. 2006 のメタ分析ほか) | この回の間隔が最適であること | 強 |
| 実画像・実地図と文章を一緒に使う | 言葉と図を組み合わせると、言葉だけより学習成績がよいことが多い(Mayer のマルチメディア学習研究) | 頭の中で像を再構成する手順そのものの効果 | 強 |
| 地図の上に事実を結びつける(この回の中心) | 地図と一緒に学んだ文章の事実が思い出しやすくなる(Kulhavy らの一連の研究) | 多くは短い教材と短い保持期間での結果。頭の中だけの地図で同じ効果が出るか | 中 |
| 地形を隣接関係で覚える(演習5) | 手がかりを増やすと想起が助けられるという一般的な知見と整合する。この具体的なやり方を検証した研究は確認できていない | 単独で覚えるより優れていること | 弱 |
| 6区画に割ってから名前を入れる(02の手順) | 検証した研究は確認できていない。想起の手がかりを一定にするための設計判断 | 区画の数や割り方が最適であること | 弱 |
| 層の移動を固定の接続点に限る | 検証した研究は確認できていない。層をまたいだときに混ざるのを防ぐための設計判断 | 接続点を決めないやり方より優れていること | 弱 |
| 場所法を知識の学習に使う | 場所法の効果(Dresler et al. 2017 ほか)は無関係な語リストで示されたもの | 意味のある知識の長期定着に場所法が効くこと | 弱 |
| 観察の言語化(Bトラック) | Naghshineh et al. 2008/Gurwin et al. 2018。観察訓練で記述の量と質が向上 | 記憶力が伸びること | 中 |
研究の記述は要約です。効果量や条件は原論文で確認してください。この回で新しく足した手順(地図を重ねる、隣接関係、6区画)は、いずれも設計判断であって、効果が確かめられたものではありません。
次回の予告
木星から海王星までの4つに、この回と同じやり方で中身を足します。扱うのは、大気の帯と縞の構造(大赤斑、土星の六角形)、環の作りと見え方の違い、そして主要な衛星それぞれのカード——イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト、タイタン、エンケラドゥス、ミランダ、トリトン。可搬層を廃止したので、衛星もそれぞれ地形と数値を持つ対象になります。
岩石惑星と違い、巨大惑星には「地面」がありません。地図を重ねる代わりに、断面を重ねる回になります。
天体の数値はNASAの公開データ(NASA Planetary Fact Sheet、nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet)に基づく概数です。地形の緯度経度は概略であり、正式な値はUSGS Gazetteer of Planetary Nomenclature(planetarynames.wr.usgs.gov)で確認してください。ベピコロンボの日程はESA発表(2026年9月時点)、火星探査車の稼働状況はNASA発表(2026年9月時点)、月面着陸の記録は各宇宙機関の発表によります。いずれも変わりうるため、日付と合わせて扱ってください。画像はサイト内の image/memoryverse/ に置いたものを表示しています(読み込めないときだけ Wikimedia Commons を参照します)。NASA 等の公開画像のほか、火星の外観は ESA/MPS for OSIRIS Team による CC BY-SA 4.0、月の外観は Gregory H. Revera 氏、月の地名図は Cmglee 氏による CC BY-SA 3.0 です(いずれも改変していません)。引用研究の記述は要約であり、原論文の主張全体を代表するものではありません。