第1回 太陽系の骨格太陽と8惑星を、頭の中に置く
太陽系そのものを覚える対象にする。太陽と8つの惑星を実際の並びで頭の中に置き、それぞれの天体の前に立ったら、大きさ・重さ・密度・中身・距離・衛星・特徴が思い出せる状態をつくる。
この回で作る型(天体の前に立つ → 巡る → 思い出す)は、そのまま地球層で国や地域を覚えるときに使う。2週かけてよい回。
この回の到達目標
- 太陽から海王星までを順・逆で言い、各天体の分類(岩石/巨大ガス/巨大氷)を添えられる詰まり0回。
- 任意の天体を指定されたら、カードの内容を見ずに7割以上言える質量(地球比)・半径・密度・中身・太陽からの距離・地球からの光の時間・衛星・特徴。
- 天体をまたいだ比較に答えられる例:「密度の高い順」「自転が逆向きの惑星」「質量と大きさの順が入れ替わる2つ」。
2つの見取り図
太陽系は、距離と大きさを同じ縮尺で描くと惑星が点になり、何も見えません。そこで頭の中に2枚の図を持ち、行き来します。
天体の巡り方
どの天体でも同じ順番で近づくと、思い出すときの足場になります。中身が違っても、順番が同じなら「次は何を見る場所か」が分かります。
| 順 | 頭の中の動き | そこで思い出すもの |
|---|---|---|
| ① 位置 | 配置図の上で、その天体に向かう | 太陽からの距離、地球からの光の時間、公転周期 |
| ② 周り | 近づくと衛星や環が見えてくる | 衛星の数と名前、環 |
| ③ 外観 | 天体の表面を見る | 大きさ、色、地形や模様、大気、温度、自転 |
| ④ 断面 | 天体を半分に切って中を見る | 物質構成、密度 |
| ⑤ 重さ | 比較図に切り替え、地球と並べる | 質量(地球比)、半径(地球比) |
天体カードは、はじめは画像だけが出ている状態です。画像をクリックすると数値と主成分が開き、もう一度クリックすると閉じます。
使い方:画像だけを見て①位置〜⑤重さを口に出し、そのあと開いて答え合わせをしてください。
「地球からの距離」の幅は、最も近づくときと最も遠いときの値です。公転で両者の位置関係が変わるため、1つの値になりません。主成分は、惑星は大気の体積比、太陽は天体全体の質量比です。
見る1分——探査機の実画像を見ながら、カードを声に出して読む。閉じる1分——目を閉じて①〜⑤を巡り、思い出せたものを言う。照合1分——カードと見比べ、抜けた項目に印をつける。翌日はその項目から巡ります。
画像:NASA Science の各惑星ページ(science.nasa.gov/solar-system/planets)、NASA Photojournal(photojournal.jpl.nasa.gov)。断面図は同じ名前で「interior」と添えて探すと出てきます。
太陽
地球の約33万倍
地球の約109倍
光で約8分20秒
中心 約1,500万℃
ヘリウム 約25%
地球の約28倍
11年周期で反転する
- 太陽系全体の質量の99.8%以上を占める
- スペクトル型G2V(黄色の主系列星)。年齢は約46億年
- 中心部で水素がヘリウムに変わる核融合でエネルギーを出す
- 固体ではないので場所によって自転の速さが違う(赤道で約25日、極付近で約35日)
岩石惑星(地球型惑星)
太陽に近い4つ。岩石と金属でできていて小さく、密度が高い。衛星は少ない。
地球の約0.055倍
地球の約0.38倍
光で約4〜12分
公転 約88日
地球の0.38倍
地球の約1%
- 大気がほぼない(地表の気圧は約10⁻¹⁰ Pa)。表面温度は昼 約430℃、夜 約−180℃と差が極端
- 極の永久影のクレーターに水の氷があると考えられている
- 2回公転するあいだに3回自転する(3:2の共鳴)
- 岩石惑星で自前の全球磁場を持つのは、地球とこの水星だけ
- 巨大な衝突跡カロリス盆地。探査機はマリナー10号、メッセンジャー、ベピコロンボ
地球の約0.82倍
地球の約0.95倍
光で約2〜15分
公転 約225日
地球の0.90倍
- 大気の約96.5%が二酸化炭素。地表の気圧は約9,200 hPa(地球の約92倍)
- 水は地表になく、大気にごく微量の水蒸気があるだけ
- 温室効果で表面は約460℃。太陽に近い水星より熱く、惑星で最も高温
- 硫酸の厚い雲に覆われ、地表は見えない。地形はレーダー(マゼラン探査機)で調べた
- 自転が公転より長い(1日が1年より長い)。地球に最も近づく惑星
公転 約365.25日
惑星で最も高い
(この値が基準)
- 大気は窒素 約78%・酸素 約21%。地表の気圧は約1,013 hPa
- 表面に液体の水がある(海が表面の約71%)。生命が確認されている唯一の天体
- プレートが動く(プレートテクトニクス)
地球の約0.11倍
地球の約0.53倍
光で約3〜22分
傾き 約25度
公転 約687日
地球の0.38倍
地殻に残留磁化 約2,000 nT
- 大気は約95%が二酸化炭素で、とても薄い(地表の気圧は約6 hPa、地球の約0.6%)
- 太陽系最大級の火山オリンポス山(高さ約22km)、巨大なマリネリス峡谷
- 両極に氷の極冠。地下にも氷があるが、いまの気圧では液体で存在しにくい
- 全球磁場はないが、南半球の地殻に残留磁化が残る
- 1日の長さと自転軸の傾きが地球に近い
巨大惑星
小惑星帯より外側の4つ。大きく、軽い物質が多く、密度が低い。4つとも環をもち、衛星が多い。木星・土星は巨大ガス惑星、天王星・海王星は巨大氷惑星。
下の数はNASA Space Placeの記載(2026年7月更新のページ)によります。木星は2026年4月時点で115、土星は2026年6月時点で293。資料によって数え方や時点が違うので、数は日付と一緒に覚え、ときどき確認してください。名前のある主要な衛星のほうが変わりにくく、覚える価値があります。
地球の約318倍
地球の約11倍
光で約33〜54分
惑星で最短
公転 約11.9年
地球の2.5倍
地球の約2万倍
- 質量はほかの惑星をすべて合わせた量の2倍以上
- 地球より大きな嵐大赤斑と、横縞の模様
- 環は薄く暗い。探査機はガリレオ、ジュノーなど
地球の約95倍
地球の約9.1倍
光で約1.1〜1.5時間
公転 約29.5年
水より小さい
地球の1.07倍(地球並み)
自転軸とほぼ一致(1度未満)
- 主に氷の粒でできた、はっきりした環
- 巨大惑星でいちばん大きいのに、表面重力は地球とほぼ同じ。密度が低いため
- 北極に六角形の雲の模様
- 惑星の中で最も衛星が多い。探査機カッシーニ(2017年に任務終了)
地球の約14.5倍
地球の約4.0倍
光で約2.4〜2.9時間
傾き 約98度
公転 約84年
地球の0.90倍(金星と同じ)
中心からもずれる
- 自転軸がほぼ横倒し。転がるように公転する
- 表面重力は 8.87 m/s² で金星とほぼ同じ
- 1781年にハーシェルが望遠鏡で発見した最初の惑星
- 近くを通った探査機はボイジャー2号(1986年)だけ
地球の約17倍
地球の約3.9倍
光で約4.0〜4.4時間
公転 約165年
巨大惑星で最も高い
地球の1.14倍
中心からずれる
- 天王星より小さいが重い(質量と大きさの順が入れ替わる)
- 太陽系で最も強い部類の風。ボイジャー2号(1989年)が暗い嵐大暗斑を撮影
- 1846年、天王星の軌道のずれから計算で位置を予測して発見された
距離の単位(光年との関係)
光年は恒星までの距離に使う単位で、太陽系の中では値が小さすぎて比べにくくなります。そこでこの回では、地球からの距離を光で何分・何時間かで覚えます。同じ「光が進む時間」の考え方なので、第14回で恒星(光年)に出るときにそのままつながります。
| 距離 | 光の時間 | 光年にすると |
|---|---|---|
| 地球→月 | 約1.3秒 | 約4.1×10⁻⁸光年 |
| 地球→太陽(1AU) | 約8分20秒 | 約1.6×10⁻⁵光年 |
| 地球→海王星(最接近時) | 約4時間 | 約4.5×10⁻⁴光年 |
| 太陽→最も近い恒星(プロキシマ・ケンタウリ) | 約4.2年 | 約4.2光年 |
1光年は約9.5兆km、約63,000AU。地球からの距離は公転によって変わるので、カードには最も近いとき〜最も遠いときの幅で載せています。
演習
すべてカードを見ずに答え、答えたあとで開いてください。間違えた項目は控えておき、翌日その天体から巡ります。
演習1岩石惑星を並べる
- 密度の高い順に4つ並べてください。
- 半径の大きい順に4つ並べてください。
- 表面が最も高温なのはどれですか。その理由は?
解答
- 地球(5.51)>水星(5.43)>金星(5.24)>火星(3.93)。水星は小さいのに密度が高い。鉄の核が大きいためです。
- 地球>金星>火星>水星。
- 金星(約460℃)。二酸化炭素の厚い大気による温室効果のため。太陽からの距離だけで決まるわけではありません。
演習2光の時間
- 太陽の光が地球に届くまで、約何分ですか。
- 火星が最も遠いとき、地球との通信は片道で約何分かかりますか。
- 地球に最も近づく惑星と、そのときの光の時間は?
解答
- 約8分20秒。
- 約22分。火星探査機を地球からリアルタイムで操縦できない理由の一つです。
- 金星。約2分(約3,800万km)。
演習3衛星から惑星へ
次の衛星はどの惑星のものですか。可能なら、その衛星の特徴も1つ言ってください。
タイタン/トリトン/ダイモス/エウロパ/オベロン/エンケラドゥス/ガニメデ/ミランダ
解答
タイタン=土星(厚い大気)/トリトン=海王星(逆向きの公転)/ダイモス=火星/エウロパ=木星(氷の下の海)/オベロン=天王星/エンケラドゥス=土星(水の噴出)/ガニメデ=木星(太陽系最大の衛星)/ミランダ=天王星
天王星の衛星は文学の登場人物の名前、と覚えておくと見分けやすくなります。
演習4特徴から天体へ
- 自転の向きが逆の惑星を2つ。
- 密度が水より小さい惑星。
- 自転周期が最も短い惑星。
- 自転軸がほぼ横倒しの惑星。
- 計算で位置を予測してから発見された惑星。
- 表面の色が酸化鉄による惑星。
解答
- 金星と天王星。
- 土星(0.69)。
- 木星(約10時間)。
- 天王星(約98度)。
- 海王星(1846年)。
- 火星。
演習5巨大惑星の入れ替わり
- 巨大惑星4つを質量の大きい順に並べてください。
- 同じ4つを半径の大きい順に並べてください。
- 1と2で順番が入れ替わるのはどこですか。それは密度のどんな違いを表していますか。
解答
- 木星(約318)>土星(約95)>海王星(約17)>天王星(約14.5)。
- 木星(約11)>土星(約9.1)>天王星(約4.0)>海王星(約3.9)。
- 天王星と海王星。海王星は小さいのに重い、つまり密度が高い(1.64 対 1.27)。巨大惑星で最も密度が高いのは海王星です。
演習6天体カードを白紙から再現する
天体を1つ選び(サイコロなどで無作為に)、①位置→②周り→③外観→④断面→⑤重さの順で、思い出せることをすべて紙に書いてください。書き終えたらカードと照合し、項目数で正答率を出します。
採点のしかた
カードの数値欄(惑星は9項目、太陽は8項目)+中身+衛星+特徴の各行を1項目として数えます。数値は1桁目と桁が合っていれば正解とします(例:木星の質量「地球の約300倍」は正解、「約30倍」は誤り)。
正答率7割が到達目標②の目安です。何度も落ちる項目は、その天体の実画像のどこに結びつけるかを決め直してください(例:土星の密度=「環の下の水に浮いている土星」の像)。
演習7核の大きさで並べる
- 岩石の5天体(水星・金星・地球・月・火星)を、核が半径に占める割合の大きい順に並べてください。いちばん大きいものは、そのことから何が言えますか。
解答
- 水星(約80%以上)>地球(約55%)>金星・火星(約50%)>月(約20%以下)。水星は鉄の塊に薄い岩石をかぶせたような姿で、小さいのに密度が高い理由がここにあります。逆に月は鉄が少なく、これが、月が地球のマントルの材料からできたという説の根拠の一つです。
第1〜5回の改訂
| 回 | タイトル | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 太陽系の骨格 | この教材。太陽と8惑星の基本情報と特徴。2つの見取り図 |
| 2 | 岩石惑星を深める | 水星・金星・地球(外観)・火星の主な地形、大気、探査の歴史。月の詳細 |
| 3 | 巨大惑星を深める | 木星〜海王星の大気の構造、環、主要衛星それぞれのカード |
| 4 | 小天体 | 小惑星帯(ケレス、ベスタなど)、準惑星(冥王星ほか)、カイパーベルト、彗星、オールトの雲 |
| 5 | 太陽と全体の統合 | 恒星としての太陽の詳細、太陽系の形成、全天体の横断比較と巡回 |
第6回以降(時間軸・銀河層・作業台)は、地球層(第6回〜)に入る前に目的に合わせて見直します。
根拠と強度
| この回の要素 | 主な根拠 | 示していないこと | 強度 |
|---|---|---|---|
| 見ずに思い出す(演習・前日想起) | 検索練習効果。読み返しより想起のほうが長く残ることが多数の研究で繰り返し示されている(Roediger & Butler 2011 の総説ほか) | 理解や応用が自動的に伸びること | 強 |
| 間隔を空けて繰り返す(前日・3日前) | 分散学習の効果(Cepeda et al. 2006 のメタ分析ほか) | この回の間隔が最適であること | 強 |
| 実画像と文章を一緒に使う | 言葉と図を組み合わせると、言葉だけより学習成績がよいことが多い(Mayer のマルチメディア学習研究) | 頭の中で像を再構成する手順そのものの効果 | 強 |
| 地図の上に事実を結びつける | 地図と一緒に学んだ文章の事実が思い出しやすくなる(Kulhavy らの一連の研究) | 多くは短い教材と短い保持期間での結果。頭の中だけの地図で同じ効果が出るか | 中 |
| 場所法を知識の学習に使う | 場所法の効果(Dresler et al. 2017 ほか)は無関係な語リストで示されたもの | 意味のある知識の長期定着に場所法が効くこと | 弱 |
| 近づく順番を揃える(①〜⑤) | 検証した研究は確認できていない。想起の手がかりを一定にするための設計判断 | この順番が最適であること | 弱 |
| 地球比で数値を覚える | 検証した研究は確認できていない。比べやすさを優先した設計判断 | 絶対値より残りやすいこと | 弱 |
| 観察の言語化(Bトラック) | Naghshineh et al. 2008/Gurwin et al. 2018。観察訓練で記述の量と質が向上 | 記憶力が伸びること | 中 |
研究の記述は要約です。効果量や条件は原論文で確認してください。
次回の予告
水星・金星・地球(外観)・火星の主な地形(カロリス盆地、マクスウェル山脈、オリンポス山、マリネリス峡谷など)、大気の違いとその理由、探査の歴史、そして月の詳細を扱います。第1回のカードに、表面の地図を1枚ずつ重ねる回です。
天体の数値はNASAの公開データに基づく概数です。衛星の数はNASA Space Place(2026年7月31日更新)の記載によります。正確な値は NASA Planetary Fact Sheet(nssdc.gsfc.nasa.gov/planetary/factsheet)等で確認してください。惑星の画像はサイト内の image/memoryverse/ に置いたものを表示しています(読み込めないときだけ Wikimedia Commons を参照します)。NASA 等の公開画像で、火星のみ ESA/MPS for OSIRIS Team による CC BY-SA 4.0 です(いずれも改変していません)。引用研究の記述は要約であり、原論文の主張全体を代表するものではありません。